PR

AST SpaceMobile入門|普通のスマホが衛星と直接つながる「BlueBird」の仕組み

地球の上空で巨大な平面アンテナを広げた衛星と、地上のスマートフォンをつなぐ電波のイラスト Uncategorized

AST SpaceMobileとは

AST SpaceMobileは、米テキサス州ミッドランドに本社を置く宇宙企業です。Nasdaqに上場しています(ティッカー: ASTS)。

同社が目指すのは、宇宙からの携帯電話網です。地上の基地局が届かない場所でも、衛星から直接、普通のスマートフォンにつながる通信網を作る。これが同社の事業の核です。

3社紹介の記事では「通信」を担う会社として紹介しました。この記事では、その仕組みとビジネスモデルをもう少し掘り下げます。

ポイントは「専用端末がいらない」ことです。衛星通信というと専用のアンテナや端末を思い浮かべがちですが、AST SpaceMobileの狙いは、いま手元にあるスマホをそのまま使うことにあります。

スマホが衛星と直接つながる仕組み

スマートフォンから衛星へ電波が届く様子を地上から見上げたイラスト

この「スマホと衛星が直接つながる」仕組みは、業界ではD2D(Direct to Device)と呼ばれています。仕組みの鍵は、大きく分けて2つあります。1つはフェーズドアレイと呼ばれる大型の平面アンテナ、もう1つは提携キャリアの周波数帯を使うことです。

まずアンテナです。スマホの電波は弱く、衛星までの距離は数百kmあります。普通の衛星では、その弱い電波を拾いきれません。そこでAST SpaceMobileの衛星は、軌道上で大きく広がる平面アンテナを積んでいます。アンテナが大きいほど、地上の広い範囲を細かいセルに分けて、弱い電波でも拾いやすくなります。衛星が「空飛ぶ基地局」になる、というイメージです。

次に周波数帯です。同社は、提携する携帯キャリアがすでに持っている周波数帯(主に低い周波数帯、いわゆるローバンド)を使って通信します。スマホ側から見れば、地上の基地局とつながるのと同じ周波数・同じ仕組みで衛星とつながるため、専用端末や特別な設定が要らない。これが「普通のスマホでつながる」の技術的な理由です。

通信の流れは、スマホ → 衛星 → 地上局 → キャリアのネットワーク、という順番です。スマホと衛星の間は直接つながりますが、衛星はあくまで中継役で、受けた通信をゲートウェイと呼ばれる地上局へ送ります。ゲートウェイは携帯電話の基地局とは別の設備で、そこから提携キャリアのコアネットワークにつながって、相手のスマホやインターネットへ届きます。

衛星そのものより、「大きなアンテナ」と「キャリアの周波数帯」の組み合わせこそが、この事業の仕組みの芯です。

BlueBird衛星と展開計画

宇宙空間で平面アンテナを広げるBlueBird衛星のイラスト

同社の衛星はBlueBirdと呼ばれています。2022年9月に打ち上げた試験衛星BlueWalker 3で技術を実証し、2023年4月には、改造していない普通のスマホ同士で衛星経由の音声通話に成功したと発表しました(AT&Tの周波数帯を使用、提携キャリアの技術者も参加)。

商用衛星の第1陣は、2024年9月12日に打ち上げられたBlueBird 1〜5号機です。ケープカナベラルからFalcon 9で打ち上げられ、低軌道に投入されました。同社によれば、打ち上げ当時の商用通信アレイとしては最大級の大きさでした。

ここから先は「数を増やす」段階です。衛星が数機だけでは、衛星が頭上を通過する時間帯にしかつながりません。常時つながるサービスにするには、軌道上の衛星数を増やし、切れ目のないカバレッジを作る必要があります。同社は衛星の量産と打ち上げを進めており、展開の進み具合がそのままサービスの広がりに直結します。

BlueBirdの展開は「1機のすごさ」ではなく「何機そろったか」で読むのが正しい見方です。

なお、同社は自社でロケットを持っていません。打ち上げはSpaceXなど外部の打ち上げ事業者に依存しており、打ち上げ日程はそちらの都合にも左右されます。ここは展開計画を読むときの注意点です。

提携キャリアとビジネスモデル

衛星と地上局と街をつなぐネットワークのイラスト

AST SpaceMobileのビジネスモデルの特徴は、キャリアと組む提携型であることです。戦略的パートナーとして公表されているのは、AT&T、Verizon、Vodafone、楽天モバイル、Bell Canada、TELUS、stc Groupなどで、全体では60社以上の携帯キャリアとの関係があると同社は説明しています。

このモデルの流れはシンプルです。キャリアは、自社の周波数帯と顧客基盤を提供します。AST SpaceMobileは、衛星網と地上網を提供します。圏外だった場所でも「自社のキャリアのまま」つながるようになれば、キャリアにとっては解約防止や付加価値になり、AST SpaceMobileにとっては販売網を自前で持たずに世界へ広がる道になります。

収益化の段階でいえば、まだ「これから本格化する」段階です。試験や実証を経て、初期のサービス提供へ向かう途上にあり、継続的な商用収入が本格化するかどうかは、衛星数の増加と各国でのサービス開始の進み具合にかかっています。

AST SpaceMobileは「衛星を売る会社」ではなく、「キャリアの通信網の届かない部分を衛星で補う会社」です。

SpaceXとの構造の違い

単独型と提携型の2つのビジネスモデルを左右に描いたイラスト

同じ「スマホと衛星の直接接続」でも、SpaceXのやり方とは構造が違います。これが康平の見方でもあるポイントです。

SpaceXは、基本的に単独キャリア型に近いモデルです。自社の衛星網と自社のサービスで完結させる方向で、米国では自前の周波数帯や基地局、あるいはキャリアの買収・提携といった選択肢も含めて、単独で通信事業者として立つ形を目指すとみられています。海外展開では、国ごとに周波数帯と基地局を持つキャリアとの関係を一つひとつ築く必要があり、その負担は小さくありません。

対してAST SpaceMobileは、最初からキャリアと組む提携型です。周波数帯も基地局も、提携キャリアがすでに持っているものを使います。その分、自社で通信事業者の基盤を一から築く必要がなく、海外展開では「その国のキャリアと組む」ことがそのまま展開の道になります。

SpaceXが「自分でキャリアになる道」を進むのに対し、AST SpaceMobileは「キャリアのパートナーになる道」を進む。この構造の違いが、両社の競争の見方を分けます。

どちらが優れているかは、まだ決まっていません。単独型はコントロールしやすい反面、展開の負担が大きい。提携型は展開しやすい反面、キャリアとの調整や収益分配が鍵になります。ここは今後のサービス開始と契約の進み方を見て判断するテーマです。

注目ポイント

  • BlueBirdの打ち上げと軌道上の機数:常時接続に近づいているか
  • 初期サービスの開始地域と内容:どの国・どのキャリアから始まるか
  • 提携キャリアの広がり:新たな国でのパートナーシップや合弁の動き
  • 収益化の進み方:商用収入が立ち上がるタイミングと規模
  • 周波数帯・規制の承認:各国でのサービス提供に必要な手続きの進捗

まとめ

夜空の下で衛星と地上の人々がつながる様子のイラスト

AST SpaceMobileは、巨大な平面アンテナを持つBlueBird衛星と、提携キャリアの周波数帯を組み合わせて、「普通のスマホが衛星と直接つながる」通信網を作ろうとしている会社です。技術の実証は試験衛星と商用初号機で進み、いまは衛星数を増やしてサービスを広げる段階にあります。SpaceXとの違いは、単独でキャリアになるか、キャリアのパートナーになるかという構造の違いにあります。「何機そろったか」「どの国からサービスが始まるか」。この2つを追うのが、この会社を見るいちばんシンプルな方法だと思います。

スポンサーリンク
スポンサーリンク
Uncategorized
シェアする
のるむをフォローする

コメント

タイトルとURLをコピーしました